刑の減軽
「刑の減軽」とは、被告人に対し法律上定めてある法定刑よりも軽い刑を適用することです。自首のように減軽事由が法律で定められている「法律上の減軽」と、裁判所の判断で情状を酌量してなされる「裁判上の減軽」があります。一方「刑の減刑」とは、恩赦を与える際に適用される規定で、まず使われることはありません。
恩赦法第6条
減刑は、刑の言渡を受けた者に対して政令で罪若しくは刑の種類を定めてこれを行い、又は刑の言渡を受けた特定の者に対してこれを行う。
また、法律上の規定ではありませんが、減刑は「刑を軽くしてもらうよう裁判所に嘆願する」といった意味合いもあります。
いずれにせよ刑法の答案に「減刑」と書くと誤字として減点を食らいかねないので注意しましょう。
刑の必要的減軽・任意的減軽
「必要的減軽」とは、必ず刑を減軽しなければならない規定です。それに対し「任意的減軽」は、刑を減軽するかどうかが裁判所に委ねられています。条文上前者は「その刑を減軽する」、後者は「その刑を減軽することができる」と記載されています。例えば自首(刑法第42条1項)した場合や未遂犯(刑法第43条本文)は「できる」と記載されているので、刑が減軽されないこともあります。
具体的にどう減軽されるか
刑法第68条
法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
1.死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮とする。
2.無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、7年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
3.有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
4.罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
5.拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。
6.科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。
条文が長いですが、死刑と無期懲役(無期禁錮)以外は半分の重さになると思ってもらえれば大丈夫です。
例として強盗罪(刑法第236条)で起訴されている被告人を自首で減軽するケースを考えてみましょう。
強盗罪は5年以上20年以下の範囲内で懲役刑に処されます。よって、刑法第68条3項に基づいて刑の減軽がなされ、被告人は2年6月以上10年以下の範囲で懲役を科されることとなります。
執行猶予は懲役刑の場合3年以下でないと付けられないので、本件では裁判所の裁量で付けることも可能です。
これは余談ですが、実務では初犯の強盗罪の場合酌量減軽等により刑を減軽し、執行猶予を付けることが多々あります。
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