不起訴=無罪ではない?不起訴の種類について【裁判所職員が解説】

法律・裁判所

テレビやネットでニュースを見ているとこのような表現を目にすることがあります。

 

本日、俳優の〇〇さんが不起訴となり釈放されました。検察は情状を考慮し、起訴猶予としたとのことです。

ここでいう起訴猶予とは何のことでしょうか?不起訴になったということは犯罪を犯してはいなかったということでしょうか?

決してそういう意味ではありません。もっとも、犯罪を犯していないとも限らないんです。

これだけ聞くと意味不明ですが、実は不起訴にも様々あり、それぞれ性質が異なるんです。

本記事ではその違いについて解説します。

不起訴処分の種類

日本では、被疑者を起訴するかどうかは検察官の裁量に委ねられています(起訴便宜主義)。

つまり検察官は、被疑者が犯罪を犯していないと思われる場合はもちろん、犯している場合であっても様々な事情を考慮したうえで被疑者を不起訴処分、すなわち被疑者を刑事裁判にかけず、終わらせることができます。

その不起訴処分ですが、理由に応じて次のように分類できます。

嫌疑なし

捜査の結果,被疑者に対する犯罪の疑いが晴れた場合。

嫌疑不十分

捜査の結果,犯罪の疑いは残るものの,裁判において有罪の証明をするのが困難と考え検察官が不起訴にする場合。

起訴猶予

有罪の証明が可能な場合であっても,被疑者の境遇や犯罪の軽重,犯罪後の状況を考えた上で、検察官がその裁量によって不起訴とする場合。

※その他の不起訴

数は多くありませんが、訴訟条件を欠く(親告罪の告訴がない、公訴時効が完成している)場合や、被疑者に責任能力がなく、事件が罪にならない場合も不起訴となります。

無実なのは「嫌疑なし」の場合のみ

「無実」の意味は、以下のように事実や罪がないことを指します。

 事実がないこと。実質がないこと。「有名―」

 罪を犯していないのに、罪があるとされること。冤罪 (えんざい) 。「―の罪」「―を訴える」

出典:goo国語辞書

よって、上記不起訴処分のうち「嫌疑なし」だけが完全に無実のケースと言えるでしょう。他のケースは犯罪の構成要件には当てはまるものの裁けなかったり、犯罪を犯している可能性は排除できないが不起訴にしているに過ぎないので。

不起訴処分で一番多いのは「起訴猶予」

ちなみに、刑事実務で一番多い不起訴処分は起訴猶予です。

※出典:令和2年版 犯罪白書

この図を見ると、最近で言えば2割以上の人が起訴猶予となっていることが分かりますね。

なので、犯罪を犯してしまったとしても十分反省し、被害者への弁償をして示談がまとまれば起訴猶予となって前科がつかない可能性があります。

不起訴は無罪ではない

起訴猶予処分に対し「○○は示談金を積んで無罪放免になった!ずるい!」とか言われていることがありますが、不起訴は無罪というわけではありません。

無罪と言うのは公判で無罪判決が出され、それが確定した場合の事だからです。

これは言葉の綾でもなんでもなく、起訴猶予はあくまで「起訴を猶予された」だけなので、場合によっては将来起訴される可能性があります。

新たに犯罪を犯したことがきっかけで、一度不起訴となった事件でも訴追されることがあるので注意しましょう!

最後までご覧いただき本当にありがとうございました。

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